「夏への扉」
作者:ロバート・A・ハインライン
タイムトラベル度:★★★★☆
猫ちゃん度:★★★★★
分類:SF小説
内容:復讐/タイムリープもの
※ネタバレ注意
この感想は小説「夏への扉」についてのネタバレを含んでいます。
後日追記
色々な人の「夏への扉」の感想を読んでいる中で、女性蔑視、ロリコン死ね!というような過激な意見があって驚いてしまったので、ちょっと追記します。
まるで、大人の女に懲りた主人公が、その代替として幼い女の子へ倒錯しているかのように読まれがちな作品ですが、それは違う!と主張したいのです。
よく読んでいただければわかるかと思いますが、最終的に主人公が結婚相手を選ぶ際、幼いから、無垢だから、幼女だから…という基準ではなく「ピートが選んだかどうか」という基準で決めているのです。
一度目の婚約で、ピートの意思に反して話を進めて失敗してしまっているので、二度目はピートが選んだ相手を…という基準で、当時まだ幼かった女の子を相手に選んだわけなのです。
つまり、主人公はロリコンではなく、猫に結婚相手を選ばせるという<真性のネコキチ>であると言えるでしょう。(偏見)
…まあ、幼い女の子にツバつけておいたりするなど若干のロリコン疑惑が残りますが、ただひとつハッキリしているのは主人公はピート大好きなネコキチである!ということだけなのです。
また、猫が全く活躍しないじゃないか!という意見も散見されますが、これにもちょっと反論を。
猫飼いの皆様には納得していただけるかと思いますが、猫というものは犬のように人間にベッタリというわけでもなく、またハムスターのように人間の庇護を必要としているわけでもなく、野生の心を持った自由なケモノであるわけなのです。
そんな猫を主人公にすることがどんなに大変なのか、猫に関わったことのある方ならよくおわかりかと思います。
猫を主人公にしてしまうと、話の都合上、どうしても猫の本能に反した不自然な行動をとらせざるを得ない場面が出てきます。
この「夏への扉」は、そういった不自然な猫像を描かない、かつ猫を物語の主軸に置く、というバランスをうまくとることに成功した稀有な小説であると主張したいのであります。
猫のピートがいなくては、成り立たなかった物語。
偏見の心を捨て、主人公のネコキチ度合いを確かめるべくもう一度読み返してみていただきたいのです。
追記以上。
猫小説として名高い「夏への扉」を読んでみた。
一言で表現すると、「ロリコンおじさん、猫と共に時空を飛ぶ!」
…日本映画によくあるダサいキャッチコピーみたいになってしまった。
この「夏への扉」は、猫小説としてだけでなくタイムトラベルものとしても抜群に面白いのだが、なんといっても感銘をうけたのは冷凍睡眠が未来へのタイムマシンとして扱われているところ。
私は常々「布団は一種のタイムマシンである」という説を唱えていたのだが、誰も相手にしてくれず悲しい思いをしていた。
しかし、この小説によってはっきりと「睡眠は未来へのタイムマシンである」と証明されたのだ!
タイムマシンの定義は人によって様々だと思うが、私は以下の条件を満たすものと定義している。
・実際に経過する時間に比べ、短い主観時間で未来へ到達すること
・エネルギー消費を最低限に抑えること
100年先の未来へ行くのに、いちいち100年経過するような感覚を味わっていたらそれはタイムマシンとは言えないだろう。
また、100年先の未来へ行くのに、100年分のご飯を食べてからタイムマシンに乗るのは不可能だ。
さて、布団の場合はどうだろうか?
7時間の睡眠時間を、7時間まるまる過ごしたように感じる人は稀だろう。
また、エネルギー消費に関しても、起床時に比べて睡眠時のほうがエネルギー消費が低いことは自明の理だ。
…やっぱり布団はタイムマシンじゃないか!(但し不眠症は除く)
私の睡眠の最長記録は20時間ほどだが、もっと長時間眠っていられる布団が開発されれば、それは立派なタイムマシンではないだろうか?
好きなアニメの放送日に合わせて一週間タイムトラベルしてみたり、漫画雑誌の発売日に合わせて一週間タイムトラベルしてみたりと、実に様々な使用用途があるだろう。…ん?
話が逸れたが、ともかくこの「夏への扉」では、冷凍睡眠が未来への片道切符のタイムマシンとして描かれているのだ。
お金さえ払えば猫だって連れて行ってもらえるようだ。
タイムリープものが好きな人、猫好きな人、どちらにも薦められる良い小説である。
猫を飼った経験の無い人でも、主人公のダンと猫のピートを見れば猫好きの猫に対する愛情の深さを容易に伺い知ることができるだろう。